承認されたコロナ治療薬

塩野義製薬が開発した新型コロナウィルス感染症の経口治療薬「ゾコーバ」が緊急承認されました。このニュースがさまざまな報道機関から報じられていながら、肝心なことがまったくといっていいほど報じられていません。こうした新しい薬にすぐに飛びつく人も少なくないというのに、報じられない情報こそとても重要なのでちょっとコメントします。

このゾコーバは新型コロナウィルスに感染した人の中でも「軽症の患者」に処方されます。それは重症患者を治療する効果がないからです。それなのになんで安全性が十分に確認されてもいない薬を緊急承認しなければならないのか理解に苦しみます。いやしくもワクチンを接種していれば、今の新型コロナウィルスに感染しても、高熱はおおむね2日程度で解熱します。解熱を1日早める程度のこの薬、必要ですか?

しかし、もっと大切なことがあります。服用してはいけないケースがあまりにも多すぎるのです。一番重要な点は催奇形性をもっている可能性があるということです。ですから妊娠中の方はもちろん、妊娠の可能性がある方は服用してはいけないことになっています。ニュースでは単に「妊娠中の人をのぞいて」などという表現を使っていますがそんな甘っちょろいものではありません。

また、腎機能や肝機能が悪い人はもちろん、降圧剤や高脂血症の薬などいくつかの薬を服用している人には処方してはいけないことになっています。もし、この薬を処方する場合、医師は患者が飲んでいる薬をすべて確認して服用してよい患者かどうかを確認しなければなりません。お薬手帳をもっていない人も多い中、忙しい診療中にすべての服用薬を確認するなんてことが可能なんでしょうか。

以前のブログの記事にも書いたように、この「ゾコーバ」という薬は7月の厚労省の薬事分科会の審議で「申請効能・効果に対する有効性が推定できるものとは判断できず」と結論づけられています。そして、統計学的に効果があると判定できる症状だけに申請内容を変更して今回の緊急承認です。しかも、統計学を知っている人にはおわかりでしょうが、有意確率はP=0.04というのはあまり褒められた数値ではありません。

それでなくても新型コロナウィルスの治療薬は高額です。この「ゾコーバ」にどのくらいの薬価がついたかはわかりませんが、すでに使用されている経口薬は5日間で9万4000円もします。おそらくそれに近い値段がついたことでしょう。重症化するようなケースならともかく、「軽症な患者」にこんな高価な薬を使う必要性を私はまったく感じません。当然、私は日常の診療で処方するつもりはありません。

最後に、このような薬を緊急承認した厚労省はこう評価しています。「(ゾコーバの緊急承認は)重症化リスクのない患者に投与できる薬がなかっただけに意味がある」のだそうです。この意味、わかります?しかもこんな高価な薬を国はすでに100万人治療分をすでに発注していて、その後も適宜追加発注するんだとか。私にはまったく理解できません。処方希望の方はそうした背景をきちんと理解した上で服用して下さい。

繰り返しますが、当院ではこの「ゾコーバ」は処方しませんので悪しからず。だって、そもそも必要性を感じないんですもの。

情動主義

新型コロナの感染者数がにわかに増えてきて、「すわ、第八波か?!」という状況になってきました。新型コロナウィルスの感染状況がかわるたびにブログを更新してきた私ですが、最近の世の中の変化に対してなにかコメントを書こうという気力がわきません。それは今の感染状況に楽観的になっているからではありません。ワクチンをはじめとする医療体制に安心感をもっているからでもありません。そうではなく、このブログでこれまで繰り返してきたことをまた書かなければならないことに無力さを感じているからだと思います。

本年の7月24日に掲載した「烏合の衆になるな」という記事をまだお読みになっていない方は是非お読みください。私がこれまで(とはいっても、新型コロナウィルスの感染が拡大する以前から主張していることではありますが)に繰り返してきたことをまとめてみました。それらを読んだ皆さんがどうお考えになり、どう行動するかだと思います。必ずしも私の意見がすべて正しいと言っているわけではありません。医者の中ですらいろいろな考え方がありますから、私の意見を受け入れられないと思っている医者もいるはずです。

しかし、くれぐれも感情にながされた判断をしないようにしなければいけません。「怖い」「嫌い」「なんとなく」といった情緒だけで行動してはいけません。新型コロナウィルスの正体が徐々にわかってきたとはいうものの、ワクチンを打つべきか、打つべきではないかについての議論はまだ決着がついていません。マスクをすべきか否かについても明確な結論がでているわけではありません。そうしたことに対する考え方の違いが人々を、あるいは社会を分断する事態にもなっています。それらの分断もまた情緒的なものです。

情緒的であるが故に、生じてしまった人々の間の溝を埋めることはなかなか難しいように思えます。なにかの基準をもとに「良い、悪い」の明確な判断ができればいいのですが、新型コロナウィルスの感染に関する多くの社会問題には多少なりとも「好き、嫌い」という情緒が影響しています。「怖いからワクチンを打たない」「マスクをせずに歩き回る人たちは嫌い」「そのデータはなんとなく信用できない」など、個人の価値観や生活背景で判断することも少なくないのです。そこには思い込みもあるのでなおさら厄介です。

人々や社会の分断にもつながる今の状況を解決するためにも、私は「新型コロナウィルスを季節性インフルエンザと同じ感染症法5類に再指定する」ことが最善だと思っています。新型コロナウィルスは平成3年3月に「新型インフルエンザ等感染症」に変更されました。それまではエボラ出血熱などと同様に危険性の高い「指定伝染病」に分類されていました。しかし、あらたな分類になったとはいえ、「濃厚接触者」の定義はそのままであり、依然として検査をすることが前提とされている「怖いウィルス」のままなのです。

しかし、多くの人たちが複数回のワクチン接種を受け、ウィルスが変異を繰り返して毒性が低くなるにつれ、今の新型コロナウィルス感染症は季節性インフルエンザよりも重症率も致死率も低い年齢層があるという報告もあります。多くの先進国ではワクチンを接種する人々が減ってきており、国内のさまざまな規制や制約も解除されるようになってきました。いまだにまじめにワクチンを接種し、さまざまな社会活動をする際に「陰性証明」や「接種証明」を必要としている先進国は日本ぐらいだともいわれています。

そんな背景もあってか、最近では「ワクチンを接種しても意味がない」という意見とともに、「ワクチンは危険なものだから接種すべきではない」という声すら聴かれます。当院に通院する患者さんからも「さらなる追加接種をすべきでしょうか」と相談を受けることが多くなりました。そんなときに私はこう答えています。「マスコミにあおられて早く打つ必要はありません。確かに陽性者が増えていますが、重症者数の推移をふくめてもう少し様子をみてからでいいのでは。ワクチンの効果は数ヶ月で切れてしまいますから」と。

検査の陽性者が増えたとしても重症化するケースが少なければ恐れる必要はありません。先ほども言ったように、現在の新型コロナウィルスの重症化率や致死率は、従来の季節性インフルエンザのそれよりも低いとされています。これまでのインフルエンザには無警戒だったのに、マスコミの報道に煽られて今ぐらいの感染レベルで大騒ぎをするのは滑稽です。インフルエンザがどれだけ流行しても学級閉鎖すらしない中学校があったなんてことを忘れてもらっては困ります(いたたまれなくなった私は教育委員会に通報しましたが)。

どれほど恐ろしいウィルス感染かがわからないときは、多少のリスクも覚悟の上でワクチンを接種すべきです。その感染症でたくさんの人が亡くなっているのであればなおさらです。しかし、そのウィルス感染症の危険性が許容範囲となったとき、それでも従来のワクチン接種をなかば強制するのは間違いです。検査もまた同じ。当初から私が強調してきたように、いくら早めに検査をしても感染拡大を阻止することはできません。また、たくさんの人たちに検査をしても感染を終息させることができないことは今の中国が証明しています。

これも私が繰り返し言ってきたことですが、マスコミの報道や人のうわさに煽られてはいけません。できるだけ理性を働かせて、複数の意見を虚子坦懐に評価するように心がけるべきです。そのようなことが簡単でないことはわかっています。でも、「怖い」「嫌い」「なんとなく」という情緒で判断しないように努力することはできるはずです。情緒だけで行動することを情動主義といいますが、情動主義に陥るとことの本質を見誤ります。それだけではありません。情動主義は狂信的な人間をも作ってしまうところが恐ろしいのです。

今、世界は大きな変革期にあります。差別や偏見をなくすはずのBLM運動やLGBTがかえって社会を分断している現実を目の当たりにしています。新型コロナウィルスの出現によってあらたな価値観も生み出しましたが、大切なものを失うきっかけにもなっています。ウクライナでの戦争は世界秩序の危機をもたらすと同時に、平和のためになにが大切かを教えています。そうしたことの多くが、従来の価値観ではとらえきれないもの。それだけに我々は情動主義に陥らずに、できるだけ理性を働かせる努力をしなければならないと思います。

 

オミクロン株対応ワクチン

新型コロナウィルス感染症の流行(第七波)もだいぶ落ち着いてきました。感染者数は約1ヶ月前から減り始めていましたが、今や重症者数や死亡者数も減少を続けています。浮き足だったように騒がしかった世の中も次第に落ち着きを取り戻しつつあり、当院にかかってくる相談の電話もだいぶ減りました。

ワクチン接種も国民の8割の人たちが2回目を、6割の人が3回目の接種を終え、今は4回目の接種が進められています。2回目のワクチンを接種して5ヶ月が経過した時点での感染予防効果は50%程度(ファイザー社製)であり、発症予防効果はおよそ80%、重症化予防効果はそれ以上であることが示されています。

3回目のワクチンの接種が進行しているときに変異型であるオミクロン株の流行がはじまりました。そして、従来のワクチンがそれらオミクロン株に対して効果が若干劣っており、抗体価の低下が比較的早くはじまることがわかったことから、4回目のワクチン接種を前倒しでおこなうことになったのです。

当院でも4回目のワクチン接種をおこなっています。しかし、9月の半ばでファイザー社製ワクチンの供給がなくなり、すべてがモデルナ社製となりました。モデルナ社製のワクチンは副反応がやや多いという情報が広まっているせいか、モデルナ社製となってからワクチンを接種しに来る人の数もまた激減しています。

ワクチン接種者が激減している理由は三つあると思います。ひとつは前述したように、モデルナ社製であること。二つ目には新型コロナウィルスに感染する人の数そのものが減っていることがあげられます。もちろん、たくさんの人がワクチンを接種してくれたからこその効果だということを忘れてはいけません。

三つ目は、オミクロン株に対応するワクチン接種が始まることがあげられます。これまでのワクチンは従来型株に対するワクチン。新型コロナウィルスは途中から変異型遺伝子のB.A.2が流行し、先日まで流行していた株はB.A.5です。従来の株に加えてこれらの変異株にも対応する二価ワクチンが緊急承認されたのです。

いちぶの自治体ではこのオミクロン株に対応するワクチンの接種がはじまっています。4回目のワクチンとしてこの新しいワクチンを接種しようと現行のワクチンの接種を控えている人も少なくないはずです。そのせいか、当院での4回目のワクチンを接種しようと予約していた人にもドタキャンが増えてきました。

しかし、今いちどよく考えてみましょう。オミクロン株対応のワクチンは緊急承認された新しいワクチンです。もちろんこれまでのワクチンと同じmRNAワクチンであり、製法も多くの過程はほとんどかわりません。それが早期に承認された根拠になっています。でも、それで本当に安全だといえるでしょうか。

たくさんの人が従来にはない製法で作られた新しいワクチンを短期間になんども接種してきました。その短期的および長期的な安全性が十分に確認されないまま接種が進められました。それはその時点での新型コロナウィルス(COVID-19)が得たいの知れない恐ろしい感染症だったからです。

新型ワクチンは本来、その安全性を何年も検討してから承認されます。しかし、COVID-19が感染拡大しはじめたころ、いとも簡単に重症化し、たくさんの人が亡くなっているような雰囲気に世の中が包まれていました。日本のみならず世界が、忍び寄る目に見えない恐怖に騒然としていたのです。

そんなときに救世主として現れたのがmRNAワクチン。無毒化されたウィルスの破片を体内に注入するという従来のワクチンと異なり、ウィルスの遺伝子の一部をmRNAにして注射し、人のからだの中にウィルスのタンパクを作らせて免疫をつけるというまったく新しい発想でできたワクチンでした。

mRNAワクチンの利点は、遺伝子解析さえ完了すれがば比較的早くワクチンを製造できる点です。今回のオミクロン株対応ワクチンが迅速に製造されたのもそのためです。また、mRNAワクチンの副反応も当初心配されていたほどのものではありませんでした。当院でもヒヤッとするようなケースは一人だけでした。

現行のワクチンは世界中の多くの人が接種してきました。その数はこれまで存在していたどんなワクチンよりも多いものです。ですから、その安全性については、科学的見地からいろいろな報告がなされており、少なくとも重大な危険性はほぼないという結論がでているといってもいいでしょう。

しかし、このワクチンへの不安がぬぐえない人たちからは、ワクチンの長期的な影響を心配する声があがっています。免疫系に問題を生じるのではないか。あるいは遺伝的な問題を引き起こすのではないか、などとさまざまな懸念が示されています。もっともな懸念から荒唐無稽のものまで実にさまざまです。

長期的な問題点についてはこれからの解析を待たなければなりません。今はただワクチンの性質を考えて合理的、理性的な判断をするしかありません。ワクチンのリスクと新型コロナウィルスに感染するリスクを天秤にかけて判断することも大切です。それが「理性的かつ科学的に判断する」ということです。

これまで同じワクチンを何度も接種しなければならなかったのは新型コロナウィルスに感染するリスクをうわまわるメリットがあったからです。メリットとデメリットを勘案してのこと。しかし、今や、感染しても重症化することも、死亡することでさえも感染する人の数を考慮すれば限りなくゼロに近くなりました。

こんな状況になってもなおワクチン接種を強制するのは間違いです。ワクチン接種を前提に「なんとかキャンペーン」をすること、あるいはワクチン接種の証明書の提示を求めるといったことも同じ。With coronaという言葉が現実的に思える今は、ワクチン接種のあり方についてはもっと自由度があっていいはずです。

ひるがえってオミクロン株対応ワクチンのことはどう考えたらいいのでしょうか。冒頭にもお話ししたように、オミクロン株対応ワクチンは緊急承認されたばかりのものです。現行のワクチンの安全性を前提に承認されたにせよ、オミクロン株対応ワクチンそのものの安全性は十分に検討されたとはいえません。

新型コロナウィルスの感染拡大が落ち着き、ウィルスの病毒性も以前ほどではなくなった(ワクチンを接種しているということが前提ですが)今、そのオミクロン株対応ワクチンをあわてて接種する必要があるでしょうか。人は容易にマスコミからの情報に影響を受けます。ちょっと立ち止まって考えることが大切です。

患者さんから相談を受けたとき、私は次のようにお話ししています。「まずは4回目として現行のワクチンを接種してください。このワクチンも3ヶ月ほどで効果が弱くなります。そのころに第八波の流行がはじまったら、そのときにこそオミクロン株対応ワクチンの接種を考えればいいのではありませんか」と。

年が明けるころになれば、オミクロン株対応ワクチンの安全性に関するデータがでてくるはずです。問題なければそれでよし、多少なりとも大きな問題が生じているようであれば接種を控えることができます。慌てる○○はなんとやら。あおるような意見に左右されず、世の中の風潮にながされないことです。

ついに、ふたたび。

昨日(9月2日)の時点で、ついに青森県を除いた46都道府県で実効再生産数が1.0を切りました。東京にいたっては0.9を切る勢いです。これで今回の流行がピークアウトするのも時間の問題でしょう。しかし、油断は禁物です。しばらくは流行は続きます。どこで誰からうつされるかわかりません。うがい、手洗い、そして、TPOに応じてマスクをすることもお忘れなく。風邪症状はコロナ、と思って対応して下さい。

10月からはインフルエンザのワクチン接種がはじまります。今年はインフルエンザワクチンの供給量は潤沢とのこと。不足することを心配する必要はなさそうです。新型コロナウィルスワクチンとの同時接種も認められました。でも、私個人としては同時接種はお勧めしません。なぜなら副反応が生じたときどちらが原因かわからなくなるからです。少なくとも2週間はあけて接種することをお勧めします。

高齢者を対象に「オミクロン株対応の新型コロナウィルスワクチン」の接種もはじまります。その報道を知った人の中には、4回目のワクチン接種を控えてこの「オミクロン株対応」のワクチンを接種しようと考える人がいるようです。でも、これも私は推奨しません。それはこの新しいワクチンは「緊急承認」されたばかりのものであり、安全性が十分に検討されたものとはいえないからです。

今、4回目のワクチンとしてモデルナ製のものが接種されています。こちらでも十分に効果は期待できます。ただし、効果が持続するのは3ヶ月程度ともいわれています。とりあえず、従来のワクチンを4回目として接種し、来年になってまた第8波の流行となればそのときに「オミクロン株対応」のワクチン接種を検討すればいいと思います。それまでに不測の副反応の情報が出てくるかもしれませんし。

私も今日、職員と一緒に4回目の新型コロナウィルスワクチン(モデルナ製)を接種しました。今のところなんの副反応もありません。おそらく明日も問題ないような気がします。くれぐれもワクチン接種後に熱発があったからといってむやみに解熱しないでください。事前に解熱剤を服用するなんてもってのほかです。もちろん、高熱でつらいときは遠慮なく解熱剤を使ってください。こちらも冷静な判断をお願いします。

繰り返しになりますが

前回、「第7波もいよいよピークアウトか?」と書きましたが、お盆休みの帰省ラッシュの影響は無視できなかったようで、全国的に実効再生産数が低下していた感染者の数も帰省先となった地方を中心に増加に転じてしまいました。しかし、最近の感染者の推移を見れば、そうした増加傾向もやがては落ち着く気配があります。ふたたび実効再生産数が1.0を切る都道府県が増えてくるでしょう。

これまでの2年間を振り返ると、流行のピークに2週間遅れて重症者のピークが、さらに2週間遅れて死者のピークがやってきていました。しかし、今回の第7波の特徴のひとつは、一貫して重症者は増えていないという点です。あまりの感染者の多さに不安を感じていた人も少なくなかったかもしれません。でも、1200万人の人が住む東京都でさえ重症者は常に30人程度。要するに今の感染状況はその程度なのです。

「一日の死者が過去最高」と報道されています。でも、これだけ感染者が増えれば死者が増えるのもあたりまえです。問題なのは「死者÷感染者」で計算される「致死率」。実は今回の流行の致死率は、かつてのインフルエンザよりもずっと低いのです。ですから、あまりにも怖がっている人に私は「インフルエンザを怖がっていなかったあなた。なぜそれほどまでに新型コロナを怖がっているのですか?」と尋ねます。

今、咽頭痛や咳があって、いつもよりも体温が高ければ新型コロナ感染だと考えるべきです。でも、ワクチンを接種していれば高熱になることはあまりないようです。ですから、症状の軽重には関係なく、風邪症状があればむしろ「新型コロナウィルスに感染した」と考えて、他の人に感染を広げないような対応をとるとともに、家庭内隔離しながら肺炎になっていないか注意し、療養すればいいだけです。

多くの場合、検査など必要ありません。検査では「陽性」には意味があっても、「陰性」だからといって「感染していない」ことの証明にはなりません。「陰性」の結果が出た翌日に「陽性」となるかもしれませんし、二日後に陽性になるかもしれません。検査をむやみに要求する会社・学校が多すぎるのです。旅行をするにも「陰性証明」が必要らしいですが、そんな証明ができる検査があれば教えてほしいくらいです。

正体もわからず、予防法も治療法もまったくない頃と、今のようにワクチンもあり、重症になったときの治療法があって、しかも感染しても多くが風邪症状にとどまっている今とが同じであっていいはずがありません。人々の恐怖心をあおることを商売にする人がいます。する必要のない検査や飲む必要のない薬を勧める人もいます。正しい知識を持っていないと、そうした人のいいカモになるので注意が必要です。

いつかTVで見かけたのですが、病院に入院できずに自宅で療養する新型コロナ患者に心電図検査をする医者がいました。しかも診療費が高いモニター検査です。こんなもの本来は不必要です。また、食事もとれ、水分も補給できる患者に点滴だって必要ありません。たいした熱でもなく、軽い風邪症状で発熱外来を受診することも、またそうした患者に解熱剤を処方することも正直にいってどうかと思います。

当院に相談のお電話があったとき、軽症の風邪症状の方に私は「症状は軽いが新型コロナの可能性がある」「でも検査や薬は必要ない」「自宅内隔離で経過観察を」と説明する場合があります。しかし、そうした人の中には「じゃあ他をあたります」と納得しない人もいます。あるいは、「わかりました」と納得したように電話を切った人の中には、受話器の向こうで不満をもらしている人がいることも私は知っています。

かつてのインフルエンザのシーズンなどでも同じような光景を見てきました。「早すぎる検査には意味がないことが多いのです」「検査よりも自宅で安静が重要です」「感冒薬は風邪を治す薬ではありません」「解熱剤は辛いときに頓服で服用する薬です」。新型コロナウィルスが感染拡大してから言い続けていることは、インフルエンザが流行しているときから言ってきたことです。

ずっと私が言い続けてきたことの正しさを、今回の新型コロナウィルスの流行で理解してもらえたらいいのですが必ずしもそうではありません。「(医者が説明する)正しいこと」は必ずしも「(患者が)納得できること」ではないからです。まさに「理性は情緒には勝てない」ということです。医学的な知識をもっている医療従事者でさえ不安に振り回されている人がいるくらいなので無理もありませんが。

医学的に正しいことと正しくないこと、個人の判断に委ねていいものとそうでないものとの区別は大切です。これは日頃、私が診療する際に常に忘れないようにしていることです。患者の希望は尊重すべきですが、患者のいいなりになってはいけません。「医学的に正しいこと」と「患者の希望にそうこと」は必ずしも一致しないので悩ましい問題です。とくに今の混乱している新型コロナの診療においてはなおさらです。

医療・医学の知識や経験のない一般の人には見えないことがあります。誤解しているところもあります。それを正すのが我々医療従事者なのですが、その医療従事者の中にも「考え方の違い」や「立場の違い」があって、「言っていること」と「やっていること」が人によってさまざまです。それらも「ワクチンは打つべきか」「検査をするべきか」「薬を飲むべきか」について一般の人が混乱する原因にもなっています

いずれにせよ、マスコミからながれてくる情報にながされないようにして下さい。マスコミから発信される情報は正しいとはかぎりません。明らかな間違いではないにせよ、正しいことを正しく伝えてはいない場合がしばしばあります。情報の内容もさることながら伝え方に問題があることも。私の情報にしてもまた同じことです。私自身が正しいと思っていても、それを否定的に考える医者もいるはずですし。

いろいろな意見があっていいのです。しかし、どれが正しいかは自分のあたまで判断するしかありません。ただし、医学的なことをイデオロギーで判断してはいけません。科学は万能ではありませんが、思想や心情で考えてはいけません。「癌と戦うな」という勇ましいスローガンはその最たるものです。巷(ちまた)にながれるさまざまな情報を、自分の理性をフル活用して真贋を考えることが重要です。

 

 

ピークアウト?

先日のブログでお知らせしたように、ついに今日、全国の新型コロナウィルス感染者の実効再生産数が1.0を切りました。お盆休みの帰省が影響しなければ、第7波もピークアウトになるかもしれません。各都道府県の実効再生産数を見ても感染者が多い都道府県ほど実効再生産数が1.0を切っており、兵庫県を除いて上位12都道府県はいずれも1.0以下になっています。

【資料】新型コロナウィルス 国内感染の状況

感染の拡大が収束に向かうかも知れまでんが、まだまだ感染のリスクは高い状態が続きます。気を緩めずに、手洗いとうがいの励行、マスクエチケットを継続して下さい。そして、風邪症状のあるときは仕事や学校を休み、風邪薬(や鎮痛剤、解熱剤)を服用せずに自宅内隔離で経過観察すること。くれぐれも軽症なのに発熱外来を受診しないでください。症状がつらいときのみ対処療法薬を服用し、呼吸回数の多くなるような息苦しさや4日以上続く高熱があるときこそ発熱外来に電話で相談してください。

今、「ワクチンを接種しても新型コロナにかかっているからワクチンを接種しても意味がない」というデマが流れています。ワクチン接種から時間がたてば中和抗体が減少して感染しやすくなります。イスラエルのワクチン接種済みの医療従事者のうち、3回接種した人と4回接種した人でブレイクスルー感染をした人の割合はそれぞれ20%と7%でした。また、重篤なケースや死亡者はいなかったとも報告されています。ワクチンが無効だと思われるようなごく少数のケースをことさらに強調するデマに惑わされないで下さい。

その一方で、厚労省と日本小児科学会が勧めている「小児へのワクチン接種」に私は懐疑的です。以前にも申し上げたように、小児は新型コロナウィルスに感染しても重症化するリスクはそれほど高くありません。にも関わらず、免疫システムがまだ十分に発達していない小児に安全性が十分に確立されているとはいえない(治験の途上にもある)ワクチンを繰り返し接種することは、リスク(危険性)とベネフィット(効果)の観点からも「努力義務」を課すようなものではないはずです。

ワクチンは接種することも自由ですが、接種しないこともまた自由です。新型コロナウィルスが「恐ろしい感染症」と思われていた頃ならまだしも、今の新型コロナウィルスによる感染症はまるで風邪のようなものです。そんなときにワクチン接種を強いることはできません。4回目のワクチン接種がまさにそれです。私自身は接種する予定ですが、職員には自由意志に任せています。ただし、ワクチンの恐ろしさを強調して「ワクチンを打つな」と同調圧力をかけることも間違いですから念のため。

また、検査を過信することも間違っています。これもこれまで繰り返してきましたが、「検査は一番怪しいときにおこなうもの」です。難しい言い方をすると、「検査は事前確率をあげておこなうもの」なのです。医学部の学生でさえ誰でも知っているような基礎知識がなおざりにされています。「誰もが、いつでも受けられる検査」をまるでいいことのように言っている医者すらいるのには驚きです。検査は「陽性」であることに意味があっても、「陰性」だからといって「コロナじゃない」と言えないのです。

同じことを繰り返して「耳にタコ」かもしれませんが、「経過観察の重要性」「薬や検査の必要性」についてはあらためて考えていただきたいと思います。いずれにせよ、今の感染拡大には歯止めがかかりそうです。でも、再び流行が拡大するときがまたやってくるかもしれません。そのときのためにも、正しい知識を身につけて備えていただきたいと思います。

ついに来ました。

ついに今日(9日)、東京都や神奈川県などで実効再生産数(ひとりの患者が何人の患者にうつすか、をあらわす数字。これが1.0を下回ると感染者数が減少に転じるとされています)が1.0を下回りました。よっぽどのことがなければ今週中に、早ければ明日にでも全国の実効再生産数も1.0を下回って流行のピークアウトが発表されるでしょう。これで第7波も収束していくでしょうが、ウィルスの変異はこれからも続きます。もし第8波となっても、「感染力は強くなっても毒性は低下する」の原則は不変だと思います。くれぐれも煽られないで冷静に対処しましょう。

【資料】新型コロナウィルス 国内感染の状況

今さらだけど

ずっと前から私がいってきたことをいくつかの学会がようやくいいはじめました。第七波のピークアウトもそろそろって頃になって遅まきながら、という感も否めませんが、とりあえずはこのながれがもっと広がればいいと思います。でも、なぜかマスコミはこのことを大々的に報道しませんよね。視聴者をこれでは煽れないからですかね?病院の人たちはもう疲弊しきってますよ。

【ネット記事】症状が軽い場合は受診を避けて 日本感染症学会などが緊急声明

でも、間違わないでください。「軽症は受診を避けて」というよりも「受診の必要はない」ってことですから。理由は先日のブログで書きました。また、重症感が強い場合、とくに呼吸回数が多くなるような息苦しさをともなう高熱や4日以上の高熱は積極的に発熱外来に受診してください。ただし、あらかじめ電話をしてからお願いします。

烏合の衆になるな

冒頭、申し上げます。

マスコミに煽られないでください。

軽症の場合は解熱剤や風邪薬を服用する必要はありません。

検査で「感染したか、しなかったか」の白黒をつけることも重要ではありません。

発熱外来は「重症化しそうだ、したかもしれない人」が受診するところです。

   ウィルスは変異を繰り返して感染力を強めますが、毒性は逆に弱まっていく傾向があります。

つまりは、軽い風邪症状の場合は検査の有無とは関係なく、自宅内隔離をして経過をみることで十分です。つらくなければ薬の服用も必要ありません。発熱があっても2,3日で解熱傾向となれば心配ありません。よほどつらくなければ解熱剤を使わずに様子をみても大丈夫です。息苦しさをともなう咳、あるいは4日目になってもさがらない高熱のときは発熱外来(かかりつけ医)に電話で相談してください。

本文は私の個人的な見解であり、みなさんに押しつけるつもりはありません。また、新型コロナウィルスの感染状況を怖がっている人を否定するつもりもありませんし、今回の記事で楽観的なことを気休めで書いたつもりもありません。医療従事者として「(私が考える)まっとうなこと」を述べたにすぎません。そのことを念頭に読んでいただければ幸いです。最後に、毎日忙しく病院で働いているすべての方々に感謝します。

 

*********************************** 以下、本文

新型コロナウィルス(以下、COVID-19)の第七波がこれだけの広がりを見せていながら、私がこのブログでコメントをしないのはなぜだろうと思っている方がいるかもしれません。流行に変化の兆しが見えるたびに、適時・適切に役立つと思われる情報を記事にしてきました。しかし、今年の1月に「バカなんですか?」という記事を掲載して以来、半年にわたってCOVID-19とは関係のない話題でブログを更新してきました。

第三回目のワクチン接種がはじまり、たくさんの人に追加接種が進むにつれて、COVID-19の流行はいったん下火になっていきました。それはまるで「これでついにCOVID-19感染症も終わりになるのか」と勘違いするほどの勢いでもありました。みんながホッとしたのもつかの間、6月に入ると一転して感染者が急増。あれよあれよという間に感染が拡大し、多くの地方自治体で「過去最多」を更新するほどになってしまいました。

そんな状況をマスコミが誇張するせいで、これからどうなってしまうのだろうと不安になっている人が少なくありません。それはあわてて四回目のワクチンを接種する人たちを見ても、「風邪症状があるがどうしたらいいのか」と当院に電話してくる人たちの多さからもわかります。しかし、私は「これまでこのブログに書いてきたこと」を繰り返すしかありません。しばらくCOVID-19の話題を書かなかったのはそのためです。

私がはじめてCOVID-19について言及したのは2020年1月。以来、26回にわたってそのときどきに伝えられていた情報を整理して記事にしてきました。それらの多くの情報は今でも間違っていなかったと思います。そして、それは次々とあらたな変異株が出現しても、大きく変わることのない情報でした。でも、マスコミはそんなことはお構いなしに、流行するたびに「今日もこんなにたくさんの感染者が発生した」と煽ります。

これまでがそうだったように、マスコミでは「感染者の多さ」をことさら強調するだけで肝心なことを伝えません。その「肝心なこと」とは「感染した多くの人の症状はおおむね軽症だ」ということです。何万人の人が感染しようが、それが「単なる風邪症状」であって、重症化する人がほとんどいないのであればなにも恐れることはありません。ましてや経済を犠牲にしてまで、行動規制をする必要はないはずです。

「気にせずごく普通の生活をするべきだ」と言っているのではありません。今、流行しているCOVID-19の感染力は確かに強く、手洗い、うがいを励行し、TPOに応じてマスクをすることは引き続き大切です。しかし、それは自分が感染しないためというより、自分が意識しないところで他人にうつさないためです。感染してもほとんどの人が軽症で終わりますが、運悪くうつした相手が重症化しやすい人かもしれないからです。

今、ものすごい勢いで感染が拡大しているように見えます。でも、一番の関心事は「COVID-19に感染したかどうか」ではなく「重症化するかどうか」にあります。感染した人の多くは、咽頭痛や倦怠感、高熱が出ても2,3日で解熱傾向となり、一週間ほどで治っています。おおむね「ただの風邪」なのです。とくにワクチンを接種している人はことさらに心配する必要はありません。問題はワクチンを接種していない人たちです。

「ワクチン接種に意味がなかった」と反ワクチンのデマがながれています。これは国際機関の正式な発表をもとにしたものではありません。「ワクチンは無効だった」などというデータはないのです。確かに、COVID-19の変異が繰り返されるたびにワクチンの効果は減弱していきます。しかし、現在のB.A.5という変異株でさえもワクチンが重症化を防ぐ効果は三回の接種で70~80%とある程度はっきりした数値が報告されています。

ワクチン接種はあくまでも任意です。接種することを強制することはできません。しかし、たくさんの人にまるで「接種するな」というような情報を言ってまわることも間違いです。いわんやいちぶの過激な人たちのように接種会場に押しかけて来て、「ワクチン接種は犯罪だ」と叫んで業務を妨害することは許されません。ワクチンを打たないことは自由ですが、接種しないことの代償・危険性も考えて判断しなければなりません。

あるTVのワイドショーで、アナウンサーがゲストとして出演していた医師(感染症の専門家ではありません)に「今の新型コロナは市販の風邪薬でも治っているケースがあるようですが、風邪薬を飲んでもいいのでしょうか」と質問したそうです。それに対する医師の答えを聴いて私は驚きました。その医師は「新型コロナで服用していけない薬などない。だから市販薬の風邪薬を服用してもいい」と答えたというのです。

これまでの私のブログを読んでいただいた方ならおわかりだと思いますが、風邪であれ、COVID-19であれ、一部の重症者に使用する薬を除いて、これらを「治す薬」など存在しません。どこかの医者が「なにも投与しないよりマシだから」と得意になって投与していた「イベルメクチン」も今では誰も見向きもしません。結局、投与しても意味がなく、無効だという結論になったからです(そんなことずっと前からわかっていました)。

余談ですが、塩野義製薬から発売される予定のあらたなCOVID-19経口治療薬の承認が見送られました。効果がはっきりしないばかりか、催奇形性などの副作用の問題や併用してはいけない薬が多すぎるからです。この審査の過程で厚労省の思惑と塩野義製薬と利益相反のある委員の疑惑が暴露されました。塩野義製薬はインフルエンザの治療薬でも問題を起こしています。先の治療薬は日の目を見ないかもしれません。

風邪薬は「風邪を治す薬」ではありません。ましてや「新型コロナが市販の風邪薬で治った」などということはありえません。このワイドショーに出演した医師はまずはそこを指摘しなければいけなかったのです。むやみに解熱剤を服用すれば、熱発を不必要に抑えて重症化を発見することが遅れることがあります。あるいは、体温が上がらず、ウィルス排除の仕組みが働きにくくなって感染症を長引かせることにもなりかねません。

ちゃんとした医師であれば、「むやみに解熱剤や風邪薬は飲むべきではない。風邪症状がつらいときのみに『やむを得ず頓服』という形で服用すること」と説明するべきなのです。そして、風邪症状があったからといって薬をもらいに医療機関に行く必要もないし、新型コロナに感染したかどうかを検査で確認する必要もない(早めに検査を受けても診断は不正確になるだけ)ということを付け加えるべきなのです。

これまで何度も繰り返してきたように、検査は「一番怪しいときに実施するもの」です。からだの中からあふれ出てきたウィルスを検出するのですから、検査が早すぎればウィルスはまだあふれ出てきていない可能性が高く、「陰性」と診断されたからといって安心はできません(検査をした後にウィルスがあふれて他人にうつすということもある)。それは抗原検査であれ、PCRであれ、検査はおおむねすべてがそうです。

そもそも検査をたくさんやっても感染はおさえられないということは今の中国を見ればわかるはずです。これはCOVID-19の感染がはじまった当初からいわれてきたことです。当時は盛んに検査をしろ、と叫んでいた人たちが今は口をつぐんでいることからも明らかです。それなのに岸田政権は「発熱外来を増やし、検査を増やす」と言っているようです。どうしてこうも学べない頭の悪い人たちは愚策を繰り返すのでしょう。

ちょっとした風邪症状で発熱外来を受診すれば、発熱外来に長蛇の列ができてしまうのも当然です。「なんとなく心配だから」というだけで検査をすれば、検査キットが不足して本当に必要な人が検査できなくなるのも当然です。岸田首相が発表したようにむやみに発熱外来をふやせば、それらに拍車がかかります。しかも、うっかり発熱外来や検査場所に行けば、そこで感染する危険性だってあるということを知っておくべきです。

「風邪症状があるがどうしたらよいか」と当院にお電話をいただくことがあります。しかし「熱はない」といいながら解熱剤(頭痛薬、痛み止め)や風邪薬をすでに服用している人が少なくありません。また、風邪症状も鼻水が出る程度だが「心配だから」という人もいます。そのような人たちには「もう1日か2日ほど様子を見てまたご相談を」とお話しします。すると中には「なぜ診てくれないのか」と不満そうな方もいます。

診療を拒否しているのではありません。経過観察はとても重要なことなのです。「熱がある」というお問い合わせの場合ですら、とくに重症化の心配がないケースは「解熱剤を飲まないで様子を見てください」とお話しします。喉の痛みや咳がつらいというケースにのみ対症療法の薬をお出ししますが、これとて本来は必要のないもの。発熱外来への受診が必要だと判断した場合のみ「発熱外来で検査を」とお勧めしています。

経過を見ている患者の中で「今後、重症化するかもしれない」と思う方には、翌日から朝と夕方に電話連絡をして状況を確認しています。そして、重症化を疑うときは「発熱外来を受診してください」と伝え、それまでの経過を紹介状に書いて病院に送ります。私たちのようなプライマリ・ケア医に期待されている役割はこうした「ゲート・キーパー」の機能だと思います。そうした機能の分担をしなければ医療は崩壊します。

実際、「医療崩壊になるのか?」と心配する人もいます。確かにこれだけの人が発熱外来を受診し、検査を受けたがり、入院を希望すれば、病院の機能はやがて限界に達します。そして、それを助長するように、マスコミが煽り、人々がパニックとなり、政府がうろたえているように見えます。今のCOVID-19の病原性は恐れるほどのものではありません。それでも「医療崩壊」が起こるとすれば、それは社会不安にともなう人災です。

風邪症状があるときは仕事や学校を休んでください。風邪薬はできるだけ服用しないでください(服用する必要はありません)。検査は必要な人が一番怪しいときにおこなってください。会社や学校はむやみに検査することを求めないでください。発熱外来は重症化の恐れがある人だけが受診してください。医療機関を受診するときは事前に電話をしてください。こうしたことを発信するのがマスコミの本来の使命であるはずです。

「過去最多の感染者数」などという言葉にだまされないでください。感染の深刻さは「重症者数」で考えるべきです。しかも重症者数を感染者数で割った「重症化率」が重要です。その重症化率で言えば、今の第七波は従来のインフルエンザの重症化率の10分の1程度だともいわれています。確かに感染者数が増えていますが、それに比べて重症者の数はきわめて少数です。どうか大騒ぎをする愚かな人たちに煽られないでください。

せめてこのブログを読んでくださっている人だけは冷静になって、淡々と行動してください。原発事故のときもそうでしたが、マスコミから流れてくる情報は偏っていることが多いのです。マスコミによく登場する「専門家」と称する人たちはあてになりません。厚労省の専門家会議の委員ですら本当の意味での「専門家」は少ないのです。かつてどんなことを言っていたかを振り返れば誰を信じていいのかがわかります。

COVID-19が流行してもう2年以上が経ちます。過去の経験に学びましょう。そして、烏合の衆にならないようにしましょう。今回の流行のピークまでもうひと踏ん張りです。

 

※1 お時間があれば、これまでのCOVID-19関連記事をお読みください。

右上の検索エンジンで「新型コロナ」と検索すると記事がでてきます。

以前からずっと同じことを繰り返して書いていることがわかります。

※2 今のモヤモヤした気持ちを吹き飛ばす歌を思い出しました。

1986年に発表された、Swing out sisterの「Breakout」です。

是非、聴いてみてください(曲のタイトルをクリックしてください)。 

 

暑い夏に思うこと

まだ6月だというのに、あっという間に梅雨が明けてしまいました。例年であれば毎日うっとうしいくらいに雨雲が垂れ込め、地方によっては連日の大雨に警戒警報がでるほどなのに今年はどうしたのでしょうか。この降雨量の少なさはお米の生育に影響するかもしれません。米は高温・多湿の地域に生育する食物。降るべきときに雨が降らなかった今般の気象が秋の収穫にどのような形で現れるかとても気になります。

そしてこの暑さです。「夏は暑ければ暑い方がいい」と考える私でさえ、このところの連日の暑さは心配になるほど異常です。実は私は二度ほど熱中症になったことがあります。しかもそのときの様子を思い出せば、それなりに重症だったと思います。テレビなどでも「熱中症」というワードをよく耳にするようになりましたが、多くの人は熱中症を身近なものと思っていないのではないでしょうか。

はじめて熱中症になったのは次男がまだ幼稚園にあがるかあがらないかのころ。夏休みに家族旅行で日光に行き、家康がまつられている史跡を見ようと山道を登っているときのことでした。からだが小さかった次男を背負ってしばらく歩いていると、突然大量の汗が噴き出してきました。山の中ですからそれほど暑かったわけでもなかったのですが、私は「滝のような汗」をそのままにして山道を歩いていました。

はじめはとくにツラいという感覚もなく、冗談をいいながら私は道を登り続けました。ところが、もう少しで目的地というところで急にからだが重くなってきました。子どもには「あと少しだから自分で歩いて」と背中から降りてもらい、身軽になったと思ったとき全身から力が抜けていくのを感じました。「どうしても横になりたい」という気持ちにかられた私は周囲の目もはばからず通路に横になったのでした。

横にはなりましたが、なんとも言えない倦怠感と軽い嘔気はなかなか改善しませんでした。心臓もバクバクいっていて、私は「これが熱疲労なのかぁ」と考えていました。地べたにダウンしている私を見下ろす家内と長男はゲラゲラと笑っています。彼らを心配させてはいけないと私もなんとか微笑みを返しましたが、内心「この脱力感と動悸は血圧がさがっている証拠。ちょっとやばいな」と思っていました。

しかし、山の中でのことですから直射日光が当たっているわけではありません。気温だってそれほど高くはありません。体が冷えてくるにしたがって徐々に回復していきました。家内と子ども達はそんな私をおいたままさっさと家康のお墓へと登っていきました。熱疲労は大量の水分と塩分を失って起こります。夏場は「たくさんの汗をかいたら水分と塩分を補給する」ことが大切。決して水分だけではいけません。

二度目の経験も夏でした。人間ドックで胃カメラ検査を受けたあと、水分の摂取もそこそこに帰宅を急いだのでした。最寄りの駅から自宅までは徒歩で30分ほど。健診が終わった安堵感か、気分も少し高揚していたこともあって、「暑い中を歩いて帰ろう」と考えてしまいました。照りつける日差しも、吹き出す汗も、心なしか気持ちよく感じていて、以前、日光で熱中症になったことなどすっかり忘れていました。

全身に太陽が照りつけ、途中、「自販機でなにか冷たいものでも買おうか」と考えましたが、家に帰って、シャワーをあびて、冷たいものを一気に飲んだらどんなに気持ちいいだろうなどと想像しているうちに自宅まであと少しというところまで来ました。「滝のように流れ落ちる汗」もそのままに私は歩き続けました。角をまがってあと数十メートルもすれば自宅、というところで熱中症の症状は突然やってきました。

日光のときのような全身の強い倦怠感が襲ってきたのです。私はあのときの体験を思い出しました。吹き出す汗、すぐにでも横になりたい気だるさ、激しい動悸と軽い嘔気。あのときとまるで同じ症状です。私は自宅を目の前にして歩けなくなってくるのを感じました。「家にたどりつけないかもしれない」と思いました。なんとなくもうろうとしてきたのを自覚しながら、倒れ込むようにして玄関に入りました。

驚いて駆け寄ってきた家内に、冷たいタオルと冷たいスポーツ飲料をもってくるように頼みました。日光のときよりも重症のように感じました。日光の山の中と違ってさえぎるもののない炎天下。気温も湿度も、また失う汗の量も全然違うのです。回復したあとで私は思いました。1984年のロサンゼルスオリンピックの女子マラソンで熱中症となったアンデルセン選手に近い状況だったのではないかと。

あのときのアンデルセン選手は「労作性(運動性)熱中症」だったといわれています。激しい運動により水分と塩分を失い、上昇した体温がさがらなくなる「労作性熱中症」になっていたのです。運動による体温上昇がはげしく、冷却されにくい環境であれば、必ずしも気温が高くなくても熱中症にはなります。そして、横紋筋融解症(筋肉が壊れる病態)や中枢神経障害をも引き起こすこともあるとされます。

このとき私は学びました。「熱中症は突然やってくる」のだと。畑仕事をしていた高齢者が熱中症で亡くなったというニュースをよく耳にします。かつて私は「そんなになるまでなぜ仕事をしていたんだろう」と疑問でした。しかし、違うのです。亡くなった人たちは「滝のような汗」をかきながら「もう少しできる」と思っているうちに、突然、熱中症の強い倦怠感に襲われ、地べたに倒れ込んだまま亡くなったのです。

今回のブログを読んでくださっている方の多くも、心の底では熱中症と自分は縁遠いものと思っているかもしれません。そして、「熱中症になりそうになったら休むから大丈夫」だと思っているはずです。しかし、「熱中症になったかな?」と思ったときではもう遅いのです。熱中症は突然やってくるのです。しかもその症状は私ですら立っていられないほど強い倦怠感なのだということを知ってください。

「滝のような汗」がではじめたらただちに涼しい場所に移動してください。そして、水分と塩分を補給してください。高温あるいは多湿の環境に長時間身をおかないことが大切です。「エアコンの冷房は嫌いだからつけない」という人がいます。しかし、「好き、嫌い」の問題ではありません。熱射病で亡くなる人の多くが冷房をつけていません。窓を開けて風通しのよい室内であっても、湿度が高ければ除湿が必要です。

政府は国民に電力の消費を抑えるよう要請しています。要するに冷房の使用を控えるようにということです。節電した国民にはポイントを付与し、節電に協力しなかった企業には罰則をもうけるという話しもあります。しかし、そのポイントも実はひと家庭あたり一ヶ月で数十円程度だということがばれ、急遽一回だけ2000円分の追加付与が決まりました。節電しない企業には罰則だなんて愚策は論外もいいとこです。

今、原油が高騰しています。それでなくても日本は、なんの法的根拠もなく、科学的根拠もないままに原発が止められています。史上類を見ない大地震が発生するリスクが低下しているのにまだ原発を停止しているのです。しかも、その原発での発電量をカバーするためにこれまで何兆円もの燃料費を余分に支払って火力発電をフルに稼働させているのです。今の原油高は円安でさらに燃料コストをつり上げています。

原子力発電所の多くが停止していますが、そのリスクは発電しているときとほとんどかわりません。発電はやめても原子力の火は灯っているからです。遠いヨーロッパでの戦争がアジアに飛び火し、日本に原油が入ってこなくなる事態も想定して、原発再稼働の必要性が議論されないのは実にゆゆしきことです。先の震災での原子力発電所事故の原因は、想像を超える津波が原因だということをあらためて考えるべきです。

新型コロナに対する政府の対応は、ずっと「検査、検査」「ワクチン、ワクチン」、そして「マスク、マスク」でした。この幼稚で、単調で、ピントはずれな無策ぶりはこれからも続くでしょう。この猛暑で電力が不足しブラックアウトが起こるかもしれないのに、国民に節電要請を繰り返すだけというのは実にお粗末な話しです。そんな小手先のことではなく、国民の命を守るために今こそ原発を再稼働させるべきです。

批判を恐れてなにも言わない、あるいは小手先の政策を小出しすることしかできない政治家たちにはあきれるばかりです。その一方で、理想論を繰り返すだけでなにもしない政治家はもとより、根拠希薄な週刊誌ネタを国会に持ち込んで騒ぎ立てるだけの政治家は不要です。この猛暑が続く中、参院選挙があります。国民には世界の現実に目を向け、日本の未来のために賢明な一票を投じてほしいものだと思います。

政治家の質は国民の民度を反映しています。いろいろな意味で今年の夏はいつになく暑いようです。