Googleのクチコミに苦情が寄せられました。
日頃、人から後ろ指を指されないように診療して来たつもりなので、この苦情はまさに寝耳に水。もし私の対応が無礼であったのであればお詫びしなければなりませんが、診療内容に対するご不満であるなら弁解しなければなりません。他の患者さんにも参考になることでもあるのでこの場を借りて少しご説明します。
ただし、匿名で寄せられた苦情ですので、カルテを見直した上での的確な弁明にならないかもしれません。言った、言わなかったの齟齬になる可能性もあります。いずれにせよ、苦情を寄せられた方を誹謗・中傷する意図はまったくありませんので誤解のないようにお願いします。
************************** 以下、寄せられた苦情
最悪の医者です。
3日間高熱で咳混んで家から動けず、4日目に熱も咳も変わらないけど何とか受診しないとと家からいちばんちかいこの病院に行きました。 この時期、どこの病院も混雑してるのにここは患者が誰もいませんでした、この時点でナゼなのか気がつけば良かったのですが、熱と咳の為、頭が回りませんでした。
診察は熱と咳が出てるにもかかわらず服の上から背中に聴診器当てただけで喉も見ないで「風邪ですね」で終わりました。 インフルエンザもコロナの検査もせずに。 信じられませんでした。
それからクスリを山のように出してきて隣の薬局が儲かるように処方したきました。 ただの風邪に6種類のクスリを出しますか? インフルエンザだったら、タミフル、リレンザ1つですむのに…
これほどのやぶ医者は見たことがありません。 異常に空いてる訳がわかりました。
皆さんもここへは絶対に行っては行けません。とんでもない医者ですよ。
************************* 以上
1)「熱と咳が出ているにもかかわらず服の上から背中に聴診器」「喉も見ないで風邪」
これは肺炎があるかどうかを確認したのだと思います。私が使っている聴診器は「マイクロフォン」です。服の上から聴診するために使っています。それは次のような理由からです。
●聴診器を直接肌に当てない
・服を脱がせることで寒い思いをさせない(プライバシーに対する配慮でもあります)
・患者が感染症だった場合、肌に当てた同じ聴診器を他の患者に使用して感染を広げない
・診察時間を短縮する(衣服の脱ぎ着きに時間をかけない)
この聴診器はノイズキャンセリング機能がついており、服の上からでも肺炎・気管支炎の有無や気管支喘息の状況、心雑音などを確認するのに支障はありません。ただし、詳細に聴診するときには適していませんが、一般診療における聴診においてはこれで充分だと考えます。
「熱と咳が続いている」ということだったので、肺炎を疑って聴診したものの、肺炎を疑わせる異常がなかったのでしょう。しかし、私は単なる気管支炎だったとしても、このような場合は、念のため抗生物質を処方していると思います。その一方で、「高熱が続いている」という訴えがなかったり(聞き落とした場合もあるかも)、すでに解熱して全身状態もよければ、抗生物質を処方しないかもしれません。
なお、私は通常、簡単に「風邪ですね」という表現は使いません。風邪で高熱が続くことはないからです。もし私がそう言ったとすれば、「高熱が続いていた」という情報が頭に入っていなかったためかもしれません。診察時にまだ「熱と咳」があったという意識が私にあれば、今回のケースはなおさら「風邪」とは説明せず、「気管支炎をこじらせたもの」として抗生物質を処方していたでしょう。
風邪症状を訴えて来院された方には全例に聴診はしています。これは生活習慣病で定期受診している患者もふくめて「聴診器をあてない診療」はしてはいけないと考えるからです。咽頭痛を訴える方には咽頭部の視診もおおむね全例にやっています。もし、私が咽頭部の視診をやっていなかったとすれば、咽頭痛の訴えがなかったか、うっかりして忘れてしまった(咽頭痛が主症状ではなく、咳に意識が向いていた?)からだと思います。咽頭部の症状にあまり意味がないと考えれば省略することもあります。
2)「インフルエンザもコロナの検査もしない」「タミフル、リレンザ1つですむのに」
治療薬のないコロナはもちろん、インフルエンザの抗ウィルス薬も感染初期に服用するものです。「治療薬」ではなく、ウィルスの増殖を抑えて「発熱期間を1日ほど短縮する薬」だからです。ですから、「3日間高熱で咳き込んで」ということを聞いていれば、私は抗ウィルス薬を処方しないと思います。むしろ、気管支などの混合感染(当初のウィルス感染に細菌感染を合併したもの)を疑って抗生物質を処方するでしょう。感染初期であって、ワクチン接種がなく、比較的重症感が強ければインフルエンザの抗ウィルス薬を追加するかもしれませんが、ワクチン接種があって重症感もない場合は処方しないことが多いです。
また、このブログでも繰り返してきたように、「検査は一番怪しいときにやるもの」であり、そのタイミングは高熱となって24時間以上経過してからです。早く検査しても検査の精度が落ちて意味がなくなるのです。ましてや会社や学校から「検査をしてくるように」と強く指示された場合でなければ、ワクチンの接種歴や症状、家族歴だけで「インフルエンザ」と診断することもあります。これを「みなしインフルエンザ」といいます。ワクチンを接種した場合は検査で陰性になることがあります。ですから、そうした場合であっても、症状によっては検査の有無とは無関係に「インフルエンザ」と診断しています。
以上のことから、高熱が3日以上経過している今回のケースはインフルエンザだと思っても抗ウィルス薬は処方しないと思います。インフルエンザやコロナの検査も同様です。ましてや私が「風邪ですね」と言ったとすればなおさらです。検査をすれば当院の収入になるので助かりますが、意味があまりないと思っても検査をするのは患者が強く希望したときです。ただし、検査の必要性について説明した上で、です。
3)「クスリを山のように出してきて隣の薬局が儲かるように処方」「風邪に6種類もの薬」
以前のブログ(「傲慢な診療」をお読みください)にも書いたように、若いころの私は「風邪に薬は不要」という信念をもっていました。しかし、ある患者から思いがけずに寄せられた苦情に気が付かされました。「患者は症状がつらいから来院するのだ」ということを。以来、私は患者の訴えがあれば、薬が多くなりすぎないように注意しながらではありますが、症状緩和の薬を処方するようにしています。その結果、「咳、痰、咽頭痛、鼻水」という症状があっただけでも4種類の薬を処方します。
これが多いといえるのかどうかは私にはわかりません。ただ、「咳」という症状だけでも処方薬が1種類というわけにはいかないのです。「咳」があるならば「咳止め」を出せばいいじゃないかと思われるかもしれません。しかし、咳は「気管支内の汚いもの」を喀出するための症状。強い咳止めによって咳をとめれば「汚いもの」を喀出しずらくして、気管支炎をこじらせたり、肺炎に進展させたりすることすらあります。また、麻薬系の強い咳止めは痰を粘張にしてかえって咳をひどくすることがあるのです。
そこで私は、咳に対して比較的穏やかな咳止めと気管支拡張剤の咳止めテープを処方します。そうすることによって、不必要に咳を止めることなく、咳を鎮めて痰を出しやすくできるからです。その結果、咳の症状があるときは、去痰剤をふくめて3種類(錠剤の鎮咳薬と去痰剤、テープ剤の気管支拡張薬)を処方しています。つまり、「咳、痰、咽頭痛、鼻水」という症状があるだけで5剤を処方することになってしまいます。こじれた気管支炎や肺炎を疑えば、これに抗生物質や漢方薬を加えてさらに増えてしまうのです。
「もともと薬をたくさん服用している風邪症状の方にはできるだけ少ない薬で」と思いますが、症状によってはそうもいきません。もともと服用している多種多様の薬を「できるだけ減らしましょう」とお話ししますがなかなか納得してもらえないものです。「すでに飲んでいる薬なので減らすのは不安」だからです。そのお気持ちは理解できますし、減らすことができない薬が多い方もいるので、私は無理に減らすことはしません。「儲け主義」でたくさんの薬を服用させているわけではないのです。
その一方で、「薬はできるだけ飲みたくない」という方もいます。医療機関を受診した患者が「薬は飲みたくない」とおっしゃる理由はさまざまですが、私は医学的な見地から薬を服用する意義を説明した上でそれでも「飲みたくない」という方にはその希望を尊重しています。ただ、「薬を飲まないことによるリスクは理解しておいてください」と説明はします。あとはご本人しだいですから。我々医療従事者は「薬がほしいから医療機関に来る」と思っているので、ご要望は医師に明確に伝えなければいけません。
ちなみに「隣の薬局が儲かるように」と批判されていますが、隣の薬局は当院が経営しているわけではありません(こういう勘違いは多い)。結果として処方薬が多くなってしまっていても、薬局を儲けさせようとそうしているのではないので誤解しないで下さい。院外薬局は、処方内容に間違いがないか、現在服用している薬との相互作用がないかをきちんと確認してくれているありがたい存在です。なにより、隣の薬局は、処方薬に対する質問にもしっかり答えてくれる立派な薬局だということは強調しておきます。
4)「異常に空いているわけがわかりました」「とんでもない医者です」
苦情を寄せられた方が来院したときは年明けのせいでたまたま空いていたのかもしれません。ただ、「空いている」ことは必ずしも悪いことだと私は思っていません。当院では風邪症状のある方とそうでない方を分離して待っていただいています。それでもできるだけ混まないよう、風邪症状の方にはできるだけ空いている時間帯に来ていただくようにしています。こういう配慮にもときどき「なぜすぐに見てくれないのか」というお叱りを受けるのですが、感染拡大を防止するための対応策でありご理解いただいています。
と同時に、また何度も来院しなくてもすむよう、訴えていた症状に対する薬はできるだけお出しするようにしています。なんども来院するのはつらいですからね。そして、結構な数の薬となるときは、「たくさんの薬を飲みたくなければ、症状のつらさに応じて取捨選択して下さい」と説明しています。また、「思ったように改善しないときは、あまり間をあけないで受診してください」とお話しします。したがって、何回も来院するケースはそう多くはなく、それは患者の症状が改善しているからだと自分では思っています。
これまで長々と弁明してきましたが、それを読んでも納得いかないかもしれません。医学的な知識がなければ理解できないこともありますから。私は医学的見地から「これが最善」と思える診療をしているつもりです。その上で、なお患者の希望を考慮すべきだということであれば、クチコミに書き込むのではなく私に直接伝えて下さい。そのご意見に一理あればこれからの診療の質の向上に役立つのです。これまで書いてきたようなことを、診療中にひとつひとつ説明すればいいのでしょうがなかなかそうもいきませんから。
以前も、同じGoogleのクチコミで「人の話しを聴かない傲慢な医者」と書かれたことがあります(今は消去されています)。その批判を書いた方は当院に定期的な通院をしていた患者さんのご家族でした。書き込まれた内容からどの患者さんのことかは特定できています。そのご家族の指摘は「いつも通院している母親の訴えに、医師が耳をかさなかったために癌の発見が遅れたではないか」というものでした。このときもまさに私は寝耳に水、でした。そんな傲慢な診療をしているつもりはなかったからです。
その患者さんはいつもひとりで受診していて、それまでご家族が同伴することはありませんでした。ですから、お母さまの癌が発見されたとき、ご家族はお母さまに話しを聞いて、「なんでこんなになるまで放っておいたのだ」と憤慨されたのかもしれません。カルテを調べてさかのぼってみると、次のような経過をたどっています(なお、この方は糖尿病でしたので、定期的に採血をしていました)。
7月:胸焼けを訴えるため胃薬を追加。定期受診の際の採血では肝機能ふくめて異常なし。
8月:背部痛もある、と。胸焼けもあるため病院を受診するように説明。一ヶ月処方を継続。
9月:まだ病院には受診していない、と。胸焼けが続くことから再度受診をうながす。
10月:病院を受診して肝臓癌であることがわかる。
当時はコロナの感染拡大があったころ。それまで当院では「2ヶ月処方」といった長期処方はほとんどしていませんでした。大病院などでは2ヶ月処方はおろか3ヶ月処方が当たり前のようにおこなわれています。しかも、聴診器も当てない「変わりありませんね」の一分診療。そんなの診療ではありません。一度症状を見逃せば、あっという間に半年近くが経ってしまいます。にもかかわらず、当院でも2ヶ月処方の要望は多く、不本意ではありましたが、コロナの感染拡大を機会に2ヶ月処方を解禁にしてしまいました。
癌が見つかったこの患者の場合もちょうどそのころのことでした。訴えが気になった私はそれまでの2ヶ月処方をやめて7月、8月、9月と一ヶ月の処方で経過を診ていました。しかし、病院を受診するようになんどお話ししても受診していなかったのです。もちろん、7月の採血でなんらかの異常があれば、紹介状を書いて病院を受診させていたかもしれません。しかし、自覚症状だけで受診させ、また、なにか疑う疾患がこれといってないのに紹介状を書き、患者にその費用を請求するのは気が引けることです。
その結果、癌の発見が遅れてしまいました。病院に紹介すべきタイミングを逃さないようにしている私にとって、反省すべきところがなかったわけではありません。もっと強い口調で病院に受診するよう指示すればよかったかもしれません。採血結果もふくめて、紹介状を書くほどのケースだとは思いませんでしたから。私は日頃、患者の表情や顔色、仕草、歩き方などを注意して見ています。患者の訴えもまた同じです。その多くは不安からくるものですが、中にはそこから大きな病気につながるケースがあるのです。
ですから、この患者のご家族から「患者の訴えに耳をかさない傲慢な医者」とクチコミに書かれるとは思ってもいなかったのです。もちろん、私に傲慢さが実際にあって、私自身が自覚していないだけかもしれません。私が意地悪をしているように患者が感じることもあるでしょう。しかし、そうしたことは、私がまったく気づかないこと、あるいは、誤解にもとづく場合だと思います。ですから、気が付いたことがあったら、私に直接伝えてください。私に言えなければ当院のスタッフや薬局の方に言ってくださっても結構です。
繰り返しますが、クチコミに苦情を書いた方を批判しているわけではありません。ご意見にきちんと説明をし、私の診察・処方の意図を説明したかっただけです。その上で、なお、私を「とんでもないやぶ医者」だ、と感じられるのであればそれを私は甘受します。患者が望むことと、私が提供すべきだと考える内容が異なるのですから仕方ありません。私はあくまでも「医学的に間違っていないこと」を、患者の要望や希望にそって提供したつもりです。クチコミに投稿した方には今回の説明でご理解をいただければ幸いです。




